カシメ・ハトメ専門店パーツラボ

「片面ハトメ」とは何か?菊割ハトメについて徹底説明

「両面ハトメ」は「片面ハトメ」になる?

実を言いますと、市販の「両面ハトメ」の表記がある製品も、ハトメ本体(足の長い横から見てT字型の金具)1つ単体で取付け可能で、工具さえシッカリ合うものであれば、裏面に抑えパーツがなくても留まります。

当店パーツラボは、ほとんど全てのハトメに座金(ワッシャー)を付属させ、「丸潰し」用の工具とともに販売していますが、ハトメ本体のみを使って留めることは可能です。 実際、ハトメ200を座金無しで取付けた例などもご紹介しています。

つまりハトメは本来、1パーツのみで使える金具なのです。
こう考えたとき、「片面ハトメ」と「両面ハトメ」の本質的な違いは何なのでしょうか?

パーツラボでは「片面ハトメ」の表記を避けていますが、それは何故か。そもそもどういう性質のものが一般に「片面ハトメ」と呼ばれ、「両面ハトメ」と呼ばれるものとどう違うのかを本ページで考えたいと思います。

「片面ハトメ」とは何か?の目次

  1. 実は曖昧な「片面ハトメ」の正体
  2. ハトメの裏パーツ「座金」とは?
  3. 「座金」の有る無しで見たときの「電気ハトメ」
  4. 「菊割れハトメ」とは何か
  5. ハトメの「丸潰し」とは何か?
  6. 菊割ハトメか丸潰しハトメの見分け方
  7. 工具がハトメを菊割れにする
  8. 余談:菊割れハトメの工具について

実は曖昧な「片面ハトメ」の正体

片面カシメ(菊割れハトメ)

先に正体をバラしますと、 市販の「片面ハトメ」の商品の多くは、もともとは「ハトメ先割」もしくは「菊割ハトメ」という古くからある製品です。 ハトメの足先に割れ目があり、取り付けると裏面はパッと花が開いたように仕上がるのが特徴で、シューズの紐穴などに使われていました。 (詳細は「菊割れハトメ」とは何かをお読みください)

文具メーカーや手芸店のハトメパンチ付きの片面ハトメは昔よりも改良され、割れ目が目立たぬよう設計されていますが、基本的な構造・留め方は菊割れの原理です。

しかし此処で実験をしましょう。
市販の両面ハトメを、同じサイズの「菊割れ手打棒」で打ちます。 (※注:当店の両面ハトメではありません)すると…

  1. ハトメ200(丸潰し)を用意します
  2. 菊割れ棒でハトメ打ちをします
  3. ハトメ200(丸潰し)なのに、裏面は菊割れとして仕上がります。

裏面がパカっと花のように割れ、なんと片面ハトメに近い形状になります。

もちろん本来の菊割れハトメではありませんので、開き方は少し水平的ですが… ですが立派に菊状に割れました。 このハトメ菊割の性質はある意味とても便利なのです。これはまた機会をみてご説明します。

もし「片面ハトメは、裏面が菊の花のように割れるハトメ」と定義すると、両面ハトメも片面にできるという事も言えるようになります。 では「片面ハトメ」とは何なのか……

ここで一旦立ち戻り、もっとシンプルに「両面ハトメは2つで1つで使い、片面ハトメは1パーツのみで使う」の方向で考えてみます。

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ハトメの裏側のパーツ「座金」とは?

その前に、ハトメの本体についている「座金」と呼ばれるパーツについて先にご説明します。 ハトメに付属している丸い穴が開いた輪のようなパーツが座金

座金とは、ハトメの裏面にあてる抑えのパーツのことです。座金の役割は、ハトメを取り付けるために開けた穴がほころびて、ハトメが抜け落ちないよう「弁」のような働きをします。 逆にいうと、穴がほころんだりしない硬くて密な材質(プラ板、PP樹脂、合紙ボール紙など)の場合は、座金を使わないで取付けてしまうケースもあります。

この座金の形状はハトメの種類により異なります。

各ハトメの座金の形状の違い
丸潰しハトメ 両面ハトメ アイレット グロメット
丸潰しハトメの座金(キリンス) 両面ハトメの座金(キリンス) アイレット(大きいハトメ)の座金(キリンス) グロメット(歯付きハトメ)の座金(キリンス)
平たい板のような座金 ふっくら丸みのある座金 平たく折込みがある座金 歯(ツメ)付きの座金

※:パーツラボの基準です

市販品は、上記のような座金が付随する(グロメット以外の)製品をひっくるめて「両面ハトメ」としているところがあります。 (しかしパーツラボの両面ハトメは、ふっくら丸みのある座金で、完全に本体ハトメと同じ傘の形状となるもののみを「両面ハトメ」としています)

いずれにせよ市販「両面ハトメ」を決定づけている大きい特徴の一つが、この座金の存在です。

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「座金」の有る無しで見たときの電気ハトメ

本題に戻って、座金がない1パーツのみのハトメは、全て「片面ハトメ」と呼んでいいのでしょうか?
結論を先にいうと、適切ではありません。

実は、こういった座金を使うことを想定せずに作られたハトメがあります。 座金のない電気ハトメ 電気基盤などに使われていた電気ハトメ(かけるのハトメ)がそれです。

電気ハトメは、電気基盤などに使われていたため、裏面よりも外径(ハトメ本体筒軸の部分)と高さの寸法の厳密さの方が重要。 そのため名前も「ハトメ(外径)×(高さ)」となっており、0.5mm刻み(場合によってはもっと小さい)多くのサイズ展開があります。

電気ハトメも、外径寸法にあった菊割れ棒で打てば、「片面ハトメ」のように裏面を割って仕上げることはできます。 しかし多くの製造メーカーは、ハンドプレス機+専用打駒を対象工具として提供しており、裏面は画像のような「丸潰し」で仕上げるのがスタンダードです。

ハトメ3mm手打ち工具で、ハトメ3×3を打った場合の表面 ハトメ3mm手打ち工具で、ハトメ3×3を打った場合の裏面

せっかく厳密に寸法を合わせてつくっているのだから、裏面を割ってザラッとした不均衡な仕上がりにしてしまう事は考えてない訳です。
尚ハトメ打ち、工具による違いはハトメの取付け工具のタイプと種類をご一読ください。)

よくいただくご質問で「片面ハトメは…」というお声をいただきますが、裏からあてる本体以外のもう一つの対になる金具=座金が無いハトメを全て「片面ハトメ」と呼んでしまうと、「電気ハトメ(かけるのハトメ)」と「菊割れハトメ」が混合した状態になります

実際のところ、電気ハトメ と 菊割れハトメ の想定される利用シーンは、ずいぶんと異なっています。 菊割れハトメは、ラフな製品にザクッとした取付けをする際に有用ですが、電気ハトメはその厳密さゆえに座金は必要とせず本体のみで使われています。

一般に流通している市販品のうち「片面ハトメ」の名称で、電気ハトメを販売している例は殆どありません。 前述のとおり「片面ハトメ」の名がつく市販品の殆どは、菊割れの構造で留めているハトメです。

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「菊割れハトメ」とは何か

よく「片面ハトメ」と呼ばれる「菊割ハトメ」を使用したときの裏面仕上がりイメージ(ハトメ300菊割れ)

では「片面ハトメ」の正体、「菊割れハトメ」とは一体何なのでしょうか。

掲載画像は、ハトメ300菊割を取付けた時の裏面の仕上がりです。 金属を叩き変形させて固定することがハトメの基本です。その変形を「広げる」方向でおこなうのが菊割れです。 要するに、裏面にハトメ先端を放射線状に割れ広げることで固定するタイプのハトメなのです。

まず菊割れハトメの特徴として、本体のみで使用するため(座金がない分)比較的安価な製品が多いこと。 割れたハトメ足が裏面に食い込むように仕上り、革の裏面の「床面」と呼ばれる毛羽立った部位とは相性良く使えるるところ等です。 実際、菊割れハトメは革製品とくにブーツ等によく使われています。

ハンディ式のハトメパンチ(ホッチキスのようなハトメ工具)も、元々はこの菊割れハトメのために製造されたものでしたが、現在は少し変わってきています。

気をつけるべきは、取り付ける前段階できちんとした正円をくり抜くことです。 穴が歪であったり、縁がもろもろした円を抜くと、そこからハトメが抜け落ちます

また取付けた後の裏面は、金属の裂け目が晒されてしまいがちです。 適切な工具で打ち込めば、キレイに割れて食い込み、形状も非常に味のあるものとなりますが、お子様などが手に触れられる機会があるところには当店はあまりオススメしていません。

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ハトメの「丸潰し」とは何か?

ハトメ300(丸潰し)の取り付け後の裏面 では「広げる」以外に、ハトメを留める方法があるのか?ハトメ(丸潰し)は、その問いに答えをくれます。 掲載画像は、同じハトメ300の丸潰しを取付けた裏面ですが、ハトメの足を捲くりあげて座金で留めているのがわかります。

その名の通り丸潰しはハトメ足をくるくるっと丸めてゆき、ドーナッツの輪のようになって固定します。 座金が周囲にあけた穴の繊維のほつれをカバーし、二重のリングができたような仕上がりになるため、 まさにハトメリングといって良い形状に仕上がりに。

人によっては菊割れの方が保持力が強いとおっしゃられる方もいますが、裏面に座金をあてて・適切な工具でキチンと下まで打ち込んで丸める事ができれば、丸潰しでも強度は殆どかわりません。

菊割れハトメが「広げて留める」ならば、ハトメの丸潰しは「織り縮めて留める」固定方法です。ハトメの固定・留め方の構造が異なるのです。 実際の利用には、裏面の外観の違い、コストなどの面から、いずれが良いか仕様にあわせて決定します

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菊割ハトメ形状の特徴

ここでいったん菊割れハトメと、丸潰しハトメのハトメ本体の違いを比較してみましょう。 ハトメの足先、先端をご覧ください。

よく「片面ハトメ」と呼ばれる「菊割ハトメ」を使用したときの裏面仕上がりイメージ(ハトメ300菊割れ) パーツラボが販売中のハトメ300(丸潰し)タイプ。この本体にプラスして座金を裏からあてます

わかりやすく足に「切れ目」が入っているのが菊割れですが、製造元によってはこのようにわかりやすい切れ目ではなく、うっすら入った「折り」のようなものの場合もあります。 「折り」の場合はよく見ていただかねば分かりません。ハトメの足をよく見て、正円でない場合は菊割れではないか疑ってください。

ここまでの結論をまとめますと「片面ハトメ」とは

片面ハトメとは

  • ハトメの足の先に「刻み」がはいっている「菊割れハトメ」である
  • そのため裏面は放射線状に広がってハトメを固定する
  • その多くは座金なしで販売されている(注1)

(注1)独自の必要があり、菊割れハトメに座金をあてる方もいらっしゃいます

しかし、冒頭の実は曖昧な「片面ハトメ」の正体での実験を思い出してください。 ハトメ(丸潰し)でも、菊割れ用の工具で打つと裏面は割れて、菊割れハトメとして仕上がります。

つまり「片面ハトメ」はハトメ金具そのものに刻みが入り、菊割れ構造になるよう設計されていることは勿論ですが、裏面を菊割れにするには工具の存在が大きいのです。

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工具がハトメを菊割にする

さて、核心に近づいてきました。 「片面ハトメ」を1パーツのみで使えるハトメと定義すると適切でなく、裏面が割れることであるとしても、それは工具に左右されることがわかりました。

ここでハトメ(丸潰し)用の工具と、菊割れハトメ工具で打った時の実験結果をご覧ください。

サイズ同じハトメを両方の工具で打った時の実験結果
ハトメ(丸潰し)金具
丸潰し用のハトメ本体
菊割れハトメ金具
菊割れ用のハトメ本体
ハトメ(丸潰し)用の工具で打つ
丸潰し用のハトメ手打棒
きれいに打てる 打てない
菊割れハトメ用の工具で打つ
菊割れ用のハトメ手打棒
打てる きれいに打てる

菊割れハトメは、ハトメ本体そのものの先端に「刻み」があるという以外に、菊割れにする工具で打てば、裏面は菊割れで仕上がってしまいます。 (なお菊割れハトメを、丸潰し工具で取り付けることはできません。ハトメの縁全体ぐしゃっと潰れます)
つまり金具単体のみの問題でなく、どういう仕上がりにするかは工具に依拠するところが多いのです。

ここで前述の結論に加えて、以下の事が言えます。

「片面ハトメ」と「両面ハトメ」の違い

  • 「片面ハトメ」「両面ハトメ」は金具そのものの形状に多少の差異がある
  • しかし基本は、裏面の仕上げ方の違いである。
    それはハトメをどのようにして留めるかに関わる
  • その「仕上げ方の違い」には、金具そのものよりも取り付けに使う工具の役割が大きい

つまり「ハトメ金具の種類」というよりは、工具をつかった仕上げ方、「留め方の違い」と考えた方が良いのです。

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菊割れハトメの工具について

以上、片面ハトメとは本質的に何のことなのか?両面ハトメの違いについてお話しました。 これはもちろんザックリした概念の話で、実際にはそこから外れる構造のハトメもあります(当店の両面ハトメがそれです)。

ですがここで一旦ハトメの金具のお話はおしまいにして、菊割れにする工具について少し補足のご説明をします。 菊割れ用のハトメ手打棒

菊割れ用のハトメ工具も、ハトメ工具の種類と同じように、ハトメパンチ、手打ち工具、ハンドプレス打駒があります。 大きな違いとしては、丸潰しのハトメが全てサイズごとに異なる工具であるのに対し、菊割れハトメ用の手打棒は、それ一本で複数のハトメに使いまわしができる点です。(※全てではありません)
当店では5mmハトメ菊割れ棒のみ販売しています。

また以下の画像はハトメ300菊割打駒です。少々わかりにくいですが、上駒の溝の形状が丸潰し打駒:ハトメ300用と全く異なっています。

ハトメ300菊割打駒

上述の通り、菊割れハトメと、丸潰しのハトメについては少々煩雑です。 ハトメ金具は工具とセットでお買い求め頂くことをお勧めしていますが、どうしてもハトメおよび菊割れ用のハトメ工具が必要の方は当店パーツラボに一度お問い合せください。

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